つい廃がついったを超えて

ツイ廃が140字以上ペラペラしゃべるブログです。

トイレの落書きについて

時刻は午後9時を過ぎた頃だった。私は実家に帰ろうとしていた。実家までは2時間くらいかかるので、駅でトイレに寄っておこうと思った。ちょうど電車が着いたところだったようで、少し混んでいた。空いた個室に入って、扉を閉めた。そこに落書きがあった。

 

誰でも使えるトイレの落書きなんて、珍しいものではない。相合傘が書いてあったり、張り紙の英語が修正されていたり、それくらいはよく見るものだ。だけど、そのトイレの落書きは、差別的だなぁと思うものだった。え〜っ。うそ〜。こんなところにこんなこと書く?ちょっと動揺したが、とりあえず用を足す。用を足している時はリラックスしているので(知らんけど)、色々なことを思いつく。これ擦ったら消えるのかな?最後の1文字を擦ってみる。消えない。油性か…。便座を消毒する用のアルコールで消えないかな?いや、とりあえず駅員さんに言うべきだろう。

 

個室を出て手を洗う。言うべきだろう、とは思ったものの、私は迷っていた。このあと実家に帰る。5分後に出る電車に乗りたい。駅員さんに言わなきゃいけないかな?私が言わなくても、明日清掃の人が気付くはずだ。それで対応してもらってもいい気がする。そもそも駅員さんに言うという行為は正解なのか?ヤブヘビというか、言わなくていいことをわざわざ言って「対応しなきゃいけない」事態にしてしまうんじゃないか?めんどくせぇ〜とか思われるんじゃないか?このまま電車に乗って、実家に帰っちゃってもいいんじゃないか?

 

そう思って歩いているうちに、階段にたどり着く。落書きのことを駅員さんに言うためにこれを上るか、なかったことにして電車に乗るか。気持ちはかなり電車に乗る方に傾いていた。ここで私の中の天使が囁く。

 

「あの落書きを見て傷つく人がいるんじゃないのかな。終電まではあと数時間で、あのトイレを使う人もそんなに多くないかもしれない。でもどんな人がトイレに入るか分からないじゃない。あの落書きを見て傷つくかもしれないじゃない。それが嫌だと思うなら、駅員さんに対応してもらうべきだよ。」

 

そうだよね…。ここで私がなかったことにして電車に乗ったら、誰かが傷つくかもしれないもんね。それってほぼ私が傷つけてるようなもんだもんね。嫌だね。言おうね。階段を上る。どうか駅員さんに「めんどくせぇ〜」という反応をされませんように。

 

ご案内カウンターのドアを開ける。「どうされました?」と声をかけられる。「あの、女子トイレの個室に落書きがあって、対応してもらった方がいいかなと思って…」と私が言うと、「女子トイレに落書き?ちょっと見に行きますね!」と言われた。よかった〜言ってよかったやつだこれ。女性の駅員さんと状況を確認する。「ちょっと駅長に報告しますね」と言われ、トイレの落書きは駅長さんに報告するほどのことなんだなぁと思った。駅長さんが来るまで、どうしてあんな落書きをする人がいるのか…と思って悲しくなったりした。駅長さんが来て、電話番号と住所を伝えると、お役御免となった。落書きには目隠しをしてもらえるらしい。ふ〜よかったよかった、という気持ちで次に来た電車に乗り、実家に帰った。少し遅くなったけど、まぁいいや。

 

あのとき、天使が囁いてくれて本当に良かった。今考えてみると、電車に乗ろうとしていた自分はなんなん?と腹が立つ。できない理由を考えてただけじゃねーか。まぁ、いいわ。目隠ししてもらったから、わざわざ見ようとしない限り、あの落書きがあのトイレを使う人の目に触れることはないだろう。私は誰かの心を守ったかもしれない。そう思うと、階段を上った自分に100点をあげたい気持ちだ。ふ〜。今日はよく眠れそうです。